[文・単語][述語・補語][修飾][基本形][詞・句・節][分析の対象]
品詞の説明の中に、他の専門用語が出てしまいました。基本的な術語の説明に他の術語が出てしまうと、結局堂々めぐりになってしまうのですが、うまく避けることは難しいことです。
ここで、それらを含めて、文の成分(全体を構成する部分)と、成分同士の関係についてのいくつかの用語をかんたんに説明しておきます。
[文・単語]
「文」「単語」という概念は、文法全体の基礎になるもので、多くの議論があるところです。(基本的な概念ほど、実は根本的な問題を多く含むものだということは、他の学問分野にも共通してみられることです。)
ここでは、そういう議論には踏み込みません。常識的な共通理解があるものとして、話を先に進めます。(なお、どんな問題があるのかに興味のある方は本の終わりに付けた「補説」を見てください。)
さて、上に出て来た専門用語の中でまず説明をしておきたいものは、「補語」「述語」「修飾」と「基本形」の四つです。
[述語・補語]
おそらく、世界のどの言語にも、動詞のようなものと、名詞のようなものがあると思われます。そして、その動詞と名詞とを組み合わせて文を作り、外界の事象や自分の意思・感情などを表現していると考えられます。その、文の中心になる動詞を、文の成分としては「述語」と言い、動詞と一緒になって事がらを表現する名詞を「補語」と言います。
この「述語」になれる品詞は、言語によって違います。日本語の場合は、形容詞や「名詞+だ/です」も述語になることができまが、英語では名詞や形容詞も「be動詞」という動詞が必要ですから、述語は全部動詞だと言えます。また、朝鮮語の文法は日本語と似たところが多いのですが、形容詞が動詞の中の下位分類として見なせる点が違います。
日本語では文の終わりに述語があり、その前に補語がいくつか並びます。つまり、大まかに表せば次のようになります。
補語(+補語)+述語
日本語で補語になるのは「名詞+助詞」の形が普通です。
例1 昨日、駅前で火事があった。
この例では、動詞「あった」が述語、「昨日・駅前で・火事が」はすべて補語です。補語には必須のものと副次的なものがあります。述語「あった」に対して「火事が」は必須です。「あった」だけでは(文脈・場面で補われない限り)一つの文としてある事柄を表しているとは言えませんが、「火事があった」とすれば、一つの事柄の描写として成り立ちます。
それに対して「昨日・駅前で」は付加的な情報で、補語として副次的なものです。よりくわしく事柄を説明していますが、それがないと文が成立しないというものではありません。(これは、文の構造についての話であって、実際にその文が使われる場面で、何が重要な情報か、という話とは別です。くわしくは「4.3.1 補語の型」や「4.5.1 所デ」を見てください。)
必須補語は「Nが」だけではありません。「行く」では「Nが・Nへ/に」、「食べる」では「Nが・Nを」が必須補語です。補語については「4.動詞文」と「6.補語のまとめ」でくわしく取り扱います。